皆さんご存じの通り、2022年末をもって、デサイントがマーモットとのライセンス契約を終了しました。
また、2023年3月で販売も終了し、長年にわたって取り扱ってきたマーモットをデサントは手放す事となります。
今後マーモットの日本のライセンス権は伊藤忠商事が独占する事となりますが、どうやら当面は米規格の物をそのまま日本で販売するようです。
ただ、新ラインとして、より街着として着られるデザインを目指したマーモットキャピタルというラインを立ち上げ、こちらはユナイテッドアローズと協業して運営していくそうです。
上手くいけば、先々はアウトドアウェアも日本企画・規格でユナイテッドアローズと協力してやっていこう、という考えかもしれません。
ユナイテッドアローズは伊藤忠商事と協業し、アウトドアブランド「マーモット」の新ライン「マーモット・キャピタル」をプロデュースする。伊藤忠の生産機能とユナイテッドアローズのソフト面のノウハウを組み合わせて商品を企画し、23年秋冬から販売する。
マーモット・キャピタルは、74年創業のマーモットが持つアーカイブをベースにデザインする、アウトドだけでなくストリートでも着られる新ライン。「コンフォート・アンド・フリーダム」がコンセプトで、自由で新しいアウトドアウェアをユニセックスで企画する。ディレクターは様々なブランドのディレクションを担当し、モデルとしても活動する菊乃氏が務める。
マーモットはこの十数年、ビジネス的にはどうかは知りませんが衰退に衰退を重ね、今本国ではコスパ微妙、機能性は競合で最後尾、デザインは劣化パタゴニア、コロンビア相手に完全な負け戦、と言ったブランドに成り下がりました。
マジかよ、と思う方は本国のwebサイトにどうぞ。
日本では高コスパで機能性も高く、ただデザインは微妙だよね、というイメージの人が多かったと思います。
それも1990年代の渋谷系に流行ったイメージのダサいオワコン、みたいなブランドイメージを覆そうと毎シーズン毎シーズン、デサントの中の人が機能のアップデートを頑張って作って来た結果、ちゃんとした登山ブランドとして通用していた結果なんですよね、きっと。
デサントが今後どういうブランドをアウトドアウェアで持つのかは知りませんが、次のアウトドアウェアも間違いなく良い物を作ると思います。
だって細部までしっかりと考えられた、ちゃんとしたものを作っていましたから、登山着として。
それに引き換え本国のウェアは・・・。
いや、本国アメリカのハイキング、平地や低い山や森林と普段の生活をシームレスに楽しむには良いウェアなんだと思いますが、少なくとも日本の山で使うにはあまりメリットのない商品ばかり。
アウトドアウェアとして機能性で優位に立てるような物を伊藤忠やアローズが企画していけるとは到底思えないので、マーモットは日本人登山者とはもうお別れの時がやって来たようです。
伊藤忠商事はLLビーンの日本の独占ライセンスも2022年に得ていて、これは本国商品の卸売りをサンリバーという会社、ライセンスの独自規格品を美濃屋という会社を通じて販売していますが、やはり本格的アウトドアウェアの独自企画には手を出していません。
また、テント類といえばネイチャーハイクの国内販売権とアパレルのライセンス販売権を持っていますが、現在までのところ、アパレルはまともに展開していません。
そして数少ない伊藤忠のアウトドアウェアの展開ブランドの一つにアウトドアプロダクツがあります。
アウトドアプロダクツはアメリカでは「アホみたいに安いけど丈夫でまあまあ使えるバッグメーカー」という立ち位置みたいで、アジア以外ではウェアはほとんど販売されていないそうです。
こういうソコソコ良さそうなバックパックが定価で$55です!中華製以下の価格ですよ。
そんな素晴らしいブランドなのに、ロゴだけ貼り付けた数々のクソダサいカジュアルウェアの数々をアジアの田舎のショッピングセンターで販売しまくっているのが伊藤忠商事です。
恐らく伊藤忠は、最初はマーモットをノースフェイスの様に、本格アウトドアウェア類が引っ張って良くなったブランドイメージで、オシャレな街着を作って売りたいと思っているんでしょう。
成功すればそれは良いと思いますが、もし失敗すれば(絶対失敗すると思うけど)、マーモットのロゴをダッサイTシャツとか半ズボンに擦れるだけ擦ってもう日本でマーモットを販売できないくらいまでブランドイメージを吸い尽くしてライセンス契約を終える事でしょう。
LLビーン、マーモット、エディーバウアー(販売権のみ)の3つをこの2023年春から持つことになる伊藤忠ですから、アウトドアウェアに本格的に取り組む可能性も無きにしも非ずですが、この超高機能化しながらサスティナビリティを求められる難しい時期に遅れて参入する、というハードルの高さを越えられるのか??
わざわざ2019年に敵対的買収をして子会社にしたデサントから取り上げたくらいですから、よほど自信があるのでしょうが・・。
もしくはデサントの力を削ぎたい、政治的な何か、だったりして。
不毛地帯という伊藤忠商事が舞台の小説を読んで以来の伊藤忠ファンの私としては、応援と期待して生暖かい目で見ていきたいと思います。
マーモット殺すなよマジで!!