パタゴニアを特徴づけるのが、環境保護を優先としたWORN WEARという取り組みです。
服を大事に使う、修理して使う、お古を着ることによって環境負荷を軽減しよう、という物です。
だからパタゴニアはほとんどの製品を修理して貰えます(しかも安価に!)し、製品の耐久性も著しく高いです。
キャプリーンもRシリーズも、単純に性能が高いから長く着ても陳腐化しない、というだけではなく、単純な耐久性も高いので、値段分以上の価値がある製品が多いと思います、一部を除いて。
そう、一部を除いて。つまりH2Noを使用した製品です。
パタゴニア独自の防水透湿素材なのですが、パタゴニアのWEBサイトには、以下の様に紹介されています。
H₂Noパフォーマンス・スタンダードは、パタゴニアが防水性/透湿性/耐久性の基準として採用している規格です。その高レベルのパフォーマンスの持続性は、パタゴニアの製品保証によっても守られています。 私たちが透湿性防水素材について調べはじめた当初、耐久性や剥離、全体的なパフォーマンスの低下という業界でよくみられる生地の問題を取りのぞくことを願っていました。
(中略)
また新しい製品が加水分解(化合物が蒸し暑い環境に反応して起きる分解反応)に確実に抵抗できるように新たな測定基準も加えました。
ポリウレタン素材の一部がこういった環境により敏感で劣化が早いことに気づいた私たちは、これらの懸念に対処することによってパタゴニアの最新のH2No製品の寿命を延長させました。
N2Noはゴアテックスとは違い、母生地にポリウレタンで防水性を持たせたものです。
特徴としては
- 完全防水
- 安い
- 軽い
- 透湿性が高い
という物があり、パタゴニアの中では珍しく、他のブランドと比べても価格競争力のある商品群になります。
ただ、このポリウレタン系の防水素材というのは、化学繊維の生地に薄いポリウレタンフィルムを張り付ける、生地に塗る、吹くなどをして作るもので、
- 劣化・加水分解しやすい
- 下生地との屈曲性が違う為剥がれやすい
- 小さな穴から汚れ(主に油分)が浸透して剥がれを生みやすい
というデメリットが。
左手前がH2No
ただ、ごく小さなピンホールに対する自己修復性があったり、圧倒的に軽く作れるというメリットは持っているので、安かろう悪かろうではありません。
しかしこのポリウレタンコーティング、というのは、やはり、劣化しやすく剥がれやすい。
パタゴニアのH2Noでも特別耐久性がある、という評判もなく、現に私も私の周りもボロボロになったポリウレタンコーティングを何度も目にしていると思います。
2013AWのH2No。こうやって全体が剥離しています。
これはパタゴニアのWORN WEARの理念とはかけ離れた商品の様に思うのですが。
しかも、H2Noの剥離は修理する事が不可能、とのこと。
捨てるしかないのです。
更にはポリウレタン、というのはプラスチックの一種ですし、まさにボロボロになるポリウレタンはマイクロプラスチックの目に見える原因だと思う。
重箱の隅を突く様な主張ですが、他の製品が信じられないくらい高い耐久性であるからこそ、N2Noの耐久性の低さが気になってしまうんです。
他のメーカーのウレタン系防水ジャケットと比べてどうなのか、という事も気になりますが、少なくとも私の持っている他のブランドの防水ジャケットは10年以上防水効果が持続しています。
マーモットの防水ジャケット。12年、雨天で200回は使用している
もちろん、袖や裾に数か所ピンホール、下生地ごと小さな破れなどはありますが・・。
対してパタゴニア・・・残念ながら、そこまでの耐久性はありません。
軽く作ろうとするあまり、剥がれやすいんですかね。
ここからは推測ですが、ポリウレタンは加水分解以外にも、光、熱による劣化が発生します。
単純にコーティングが薄ければ、劣化による硬化が早いだけでなく、気温の上下によっても硬度が変わってくるので、ウレタンコーティングが薄ければ薄い程に熱変化も大きく、剥がれやすくなるのではないでしょうか。
それがもっと低価格のウレタンコーティング系レインシェルよりも耐久性が低くなっている原因だと思います。
とはいえ・・。
個人的には、見た目、軽さ、使いやすさ、防水性能から考えると、パタゴニアのH2Noを使用した商品群は「買い」だと思いますけどね。
パタゴニアにしては、理念とは整合性の取れない製品なので、気になっています。