この商品は、サスティナブルな素材で作られております(笑)
サスティナブル(持続可能な~的な意味で使われます)な素材、という言葉を、アパレル界隈で、去年あたりからよく耳に、目にするようになりました。
今年に入ってからはもっと。
コロナでやることないとろくなこと考えないな。
持続的に資源を管理する、持続的に管理できる資源を利用していく。というのは良くわかりますし、完全に同意します。
しかし、最近「うそやんwwwwおかしいだろwwww」って思う事が沢山語られるようになりました。
ここでちょっと、サスティナブル、サスティナビリティーについて、もう一度おさらいしたいと思います。
サスティナビリティーとは?
私はアパレルにおいて、その定義と生まれた背景について論を持していないので、繊研新聞に良い記事がありましたので、こちらをご紹介します。
サステイナビリティーは、地球環境や社会、経済が将来にわたり、持続的に成長し続けるための活動や考え方を指す。
(中略)
ファッションサイクルにおけるサステイナビリティーの基軸を①素材②工程③トレーサビリティー(履歴管理)④労働安全衛生――の四つに分類した。
素材から始める持続可能なファッションビジネス① | 繊研新聞
つまり、社会と経済が持続的に成長していけることを第一の目的とするものなんですね。
しかし、なんか最近は、「サスティナブルな〇〇」という言葉を、20年前の「エコな○○」みたいな意味で使っているメディアが途轍もなく多いので、微妙な違和感があります。
そして、色々な所で今話題となっているのは、この「①素材②工程③トレーサビリティー(履歴管理)④労働安全衛生」のうちの、「①サスティナブルな素材」ですね。
サスティナブルな素材とは
服飾品において、サスティナブルな素材としてよくあげられる物は大きく分けて二つ。
天然繊維と再生繊維です。
天然繊維は
- 植物系繊維(コットン系素材、麻系素材、その他マニラ麻やいぐさなど)
- 動物由来の素材(獣毛、繭繊維、羽毛)
再生繊維は
- セルロース系(レーヨン、キュプラ)
- 化学系(ペットボトル再生ポリエステル繊維)
が主なものです。
ただ、それぞれに大きな矛盾と誤解をはらんでいます。
「サスティナブルな天然繊維」の強引な線引き
まず、「コットンはオーガニックでないとサスティナブルでない」という謎の意識。
オーガニックコットンは生産において農薬や化学肥料を使わないばかりか、紡績織布、染色加工、縫製の全行程において、化学薬品を使用しない物を言います。
しかし、オーガニックな生産に拘れば生産性が悪化し、より広大な面積を占有するので、食糧生産の障害になり、結果として食糧危機を助長するという意見もあり、また、染色材などは自然界にそのまま存在するものでも健康被害があったり、土壌に悪影響のある物も多いので、一概に「オーガニック=サスティナブル」とは言えません。
それに、「獣皮はサスティナブルでない」とするのが一般的ですが、この世界の殆どの獣皮は豚革の様に食料に使われた残りが流用されているか、逆に皮革用に生産された牛などであっても、肉は食用とされます。
これを持続可能性の点で問題、とするのならば、人類は肉食を止めねばなりません。
また、「獣皮はいいけど繭繊維(シルクなど)は良い」という意見も、多分に都合の良い意見です。
長い期間、養蚕の為に最適化された蚕は、既に自ら餌をとる事も、自らを守ったり外で繁殖する能力も失っており、生存と繁殖を完全に人間に依存する生物です。
つまり、飼育する人間がいなくなれば絶滅してしまう種であり、シルクはサスティナブルとはかけ離れた素材ではないでしょうか。
この蚕の存在を無視し、蚕の野生での繁殖能力の再獲得の為の行動を起こさずに、線引きを云々言う事、それ自体がそれなりに滑稽ではあります。
再生繊維はサスティナブルか?
レーヨンやキュプラはセルロース、簡単に言うと、繊維の多い植物から作られています。
サスティナブルな素材を語る人に、この事を知らず、「レーヨンが石油から出来ている」として批判する人がいますが、違います。
「レーヨンやセロハン、キュプラは石油から出来ていない、サスティナブルだから積極的に選択しよう」という意見を目にしますが、石油から出来ていないからサスティナブルなのでしょうか?
セルロース系繊維は
- 大量の樹木
- 樹木運搬の為のエネルギー
- 繊維製造過程でのエネルギー
- 繊維製造過程での化学薬品
これらを使用する事による環境負荷と二酸化炭素排出量はとてもサスティナブルとは思えません。
また、再生化学繊維が逆に環境負荷が高いのではないか、というのは以前からずっと言われています。
つまり、
- 再生するまでの運搬収集エネルギー
- 再生時のエネルギーと薬品使用
これらが問題になっています。
また、現在、日本で主流になっている高温焼却炉では、廃プラスチックが逆に燃料になる為、プラスチックが少なくなれば、むしろ重油を足さねばなりません。
「原油から燃料が精製され、その残りかすで作られていえる科学繊維やプラスチックは、むしろ多分にサスティナブルである」という意見すらありますし、私もそう思わずにはいられません。
最後に
私は「サスティナブルな〇〇」が今流行しているのに、それとは距離を置いている人が多いのは、各論をしっかり自分で考えず、どこからか借りて来た概念でそのすべてを語り他人を非難する胡散臭さが付きまとっているからだと思います。
そしてそのサスティナブルを押す人が、この数か月色々な場所で言っている「自分で行動するだけじゃなく、人にその価値観を伝える事で世界を変えていく」というのは、カルト宗教の布教と同じでは?
「効果があるかは置いておいて、とりあえず私の考えを押し付ける」というのは、「人がいなくても屋外でも、なにがなんでもマスクしろ」というのと一緒ですよ(ニヤリ)